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電力市場では、電力系統を安定運用するために計画と実績のずれを適切に管理することが不可欠です。インバランス料金制度は、その差異を精算するための重要な仕組みとして機能しています。ここでは、インバランスについて詳しく解説します。
インバランス料金制度は、電力事業者が計画した発電量・需要量と実績値との差(インバランス)を金銭的に精算する仕組みです。2016年度の小売全面自由化以降、小売事業者と発電事業者は30分単位で計画を作成し、実需給の1時間前までに需給を一致させることが求められています。しかし、実際には差異が生じるため、一般送配電事業者が調整力を用いてこれを解消し、そのコストを関係者間で精算しています。
インバランス料金制度の主な目的は、系統全体の需給バランスを維持し、電力の安定供給を確保することです。電気は大量貯蔵が難しいため、常に需要と供給を一致させる必要があります。このバランスが崩れると周波数が変動し、最悪の場合は大規模停電の可能性があります。
また、この制度は事業者に経済的なインセンティブを与え、計画と実績のずれを抑えるよう促す役割も担っています。
インバランス料金の算出方法は、2022年度の制度改正にて抜本的な見直しが行われました。従来の市場価格ベースから調整力のkWh価格をベースとした制度に転換され、新制度では各コマで稼働した調整力の限界的kWh価格を基本として、広域運用された調整力の最高価格(上げ調整の場合)、または最低価格(下げ調整の場合)を引用します。
また、30分コマでは、前半と後半15分の価格を指令量で加重平均して算出します。
ある30分コマで前半15分の最高価格が10円/kWh(指令量80MWh)、後半15分が14円/kWh(指令量120MWh)の場合、インバランス料金は以下のようになります。
また、需給ひっ迫時には補正インバランス料金が適用され、予備率が低下するほど料金が上昇します。予備率3%未満では最大600円/kWhに達することもあり、特殊状況(出力抑制時等)では別途ルールが適用されるケースもあります。
インバランス料金制度は電力市場の変化とともに変化しています。2016年の小売全面自由化以降、計画値同時同量制度が導入されましたが、旧制度では需給バランスを促すインセンティブが弱く、送配電事業者が調整力コストを十分回収できないという課題がありました。これを解決するため、2022年度から調整力のkWh価格をベースとした新制度が導入され、需給ひっ迫時に料金が上昇する仕組みも整備されました。
インバランス料金の負担軽減には、計画と実績のずれを少なくする取り組みが重要です。そのため、高精度な需要予測システムの導入、天候や気温要因を考慮した予測、特に再エネ発電の予測精度向上などが効果的です。
また、時間前市場を活用した計画調整や、調整可能な電源・需要制御機能の確保も有効です。需給ひっ迫時は特に料金が高騰するため、こうした時間帯の対策に重点を置くことでコスト削減が期待できます。
インバランス料金制度は、電力の需給バランス維持に重要な経済的インセンティブを提供しています。2022年度からの新制度では、実需給の電気価値をより適切に反映する仕組みとなりました。負担を軽減するための効果的な対策としては、精度の高い需要予測システムの導入や時間前市場の活用などが挙げられます。
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