日本では太陽光発電の急速な普及によって、電力の供給が需要を上回る「供給過剰」の局面が増えています。その結果、出力制御(発電を意図的に抑制する措置)が頻繁に行われ、電力の価値低下や再エネ賦課金の増大といった傾向が見られるように。
本記事では、供給過剰の現状と背景、需給バランスのメカニズム、太陽光偏重による副作用、そして政府や業界が進める具体的な対策と今後の方向性について解説します。
電力は常に「需給バランス」が保たれる必要があります。需要を上回る供給が続くと、系統周波数の乱れや大規模停電のリスクが生じかねません。太陽光など再生可能エネルギーが大量に発電されても、送電しきれない場合は意図的に「捨てる」仕組み、いわゆる出力制御が行われるのです。特に需要が少ない晴天の日中は、制御の必要性が高まります。
自然エネルギー財団によると、2023年度の全国の太陽光・風力の抑制量は約1.76TWhと前年度の約3倍規模に拡大し、地域としては九州で特に高い抑制率(約6.7%)が見込まれました。2024年度以降は北海道・東北・中国・四国・関西・北陸・中部でも抑制が常態化し、東京のみが例外という構図です。
2025年度の九州に限っても、送配電会社の見通しで再エネ全体の抑制率は約6.1%、制御電力量は約10.4億kWh規模と示されています。
太陽光の出力が集中する昼間は現物市場(JEPX)で価格が低下しやすく、近年は30分値がほぼゼロ(0.01円/kWh)に観測されています。FITから市場連動のFIPへ制度が移行する中、事業者は市場価格とプレミアムの合計で収益を得るため、価格が下がると収益性が圧迫されます。
抑制が指令されれば売電そのものができず、実質的な稼働率低下と同義に。火力の稼働や連系線制約、原子力のベース運転の度合いも価格形成に影響し、地域差が生じます。
日本では、固定価格買取制度(FIT)により再エネ導入を後押ししてきましたが、その費用は「再エネ賦課金」として電気料金に転嫁され、2021年度には1kWhあたり約3.36円(※1)にもなりました。
2025年度の賦課金単価は1kWhあたり3.98円(※2)に設定され、5月検針分から翌年4月まで適用されます。導入加速で調達量が積み上がる一方、卸電力価格や制度設計の見直しで単価は年度ごとに変動するものです。抑制が増えるほど本来使えるはずのクリーン電力が活用されず、制度の費用対効果が損なわれます。
余剰電力を無駄にせず活用するため、蓄電池やV2H(電気自動車などから家庭へ給電)の導入が注目されています。蓄電が広がれば、昼間の余剰電力を充電し、夕方の需要増に放電することで、価格の谷と山をならし、抑制も緩和できるでしょう。
政府・自治体は支援メニューと市場整備を進めており、FIPのもとで事業者は価格に応じた最適運用で収益拡大が見込めます。
太陽光に偏らない再生可能エネルギー構成の見直しも進められています。洋上風力や地熱、水力など多様な電源の導入がその一環です。送電インフラの強化や地域間連系線、ノンファーム接続の活用により、地域間での電力融通も進められています。現在、広域機関は北海道—本州間の海底直流送電(日本海ルート)など大容量連系の計画を進めており、関門連系線の増強も検討されています。
日本では太陽光発電の偏重が進み、供給過剰・出力制御・価格低下・賦課金増大という課題が顕在化しています。しかし、蓄電・多様な再エネ・インフラ強化・制度改革など、複数の対応策が同時に進行中です。未来のエネルギー社会は、むしろ期待できる変化の過程にあります。
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