ここでは、電力需要予測に影響を与える制度や政策の要素をわかりやすく解説します。
電力需要を正確に予測するには過去のデータだけでなく、政策動向も考慮する必要があります。電気料金に影響する補助金制度や再生可能エネルギー(再エネ)向け優遇制度の変更が、電力使用傾向に大きく影響する可能性があるからです。
再エネ導入を促すFIT制度の拡充により家庭や企業が太陽光発電を導入すると、系統電力の購入量が減少します。逆に補助金が打ち切られると導入ペースが鈍化し、系統電力需要が増加するケースもあります。
制度変更を需要予測モデルに組み込むことで、将来の設備投資や供給計画における予測誤差を低減できます。
需要予測に影響を与える代表的な制度は次のとおりです。
制度が整備されることにより、電力の利用者だけでなく供給者の行動も変化し、結果として需要パターンに影響を与えます。
2012年のFIT制度導入当初は太陽光発電の買取価格が高く設定され、多くの家庭や企業が急速に導入を進めました。その結果、日中の系統電力需要が大幅に減少した地域も見られました。
しかし数年後に買取価格が段階的に引き下げられると新規導入が鈍化し、日中の需要が再び増加しました。再エネ導入ペースの変動が系統電力需要に直接影響を与えた事例です。
現在はFITからFIPへの移行が進み、市場連動型の取引へシフトしています。発電事業者は市場価格を意識した運用に移行すると見込まれます。
需要予測では日中の自家消費量の変化や再エネ発電者の売電意欲の変化を織り込む必要があります。具体的には、再エネ発電量が需要を上回る際の逆潮流や、蓄電池導入によるピークシフトへの対応が必要とされます。
2016年の電力小売自由化で消費者は電力会社や料金プランを自由に選択可能となり、価格に敏感な利用者が増加しました。その結果、電気料金の変動に応じた使用量変化が顕著になっています。
夏季のピーク料金導入によって使用電力量が前年比で約10%抑制された事例があり、価格シグナルが需要の時間帯構成を変える効果を示しました。
容量市場は、将来の供給力(電源の余力)をあらかじめ確保する仕組みです。特定の時間帯に電力が不足しないよう、「いつ・どのくらいの需要があるか」が制度的に問われるようになっています。
一方、同時約定市場(同時市場)は現在制度設計が進められている段階で、2025年以降の導入が予定されています。供給力と調整力を同時に取引することで、実需給に即した効率的な電力運用が期待されています。
同時市場の導入によって、将来的には需給予測の精緻化や制度運用の効率化につながる可能性がありますが、現時点で実装された制度ではないため、効果については今後の検証が必要です。
近年はデータセンターや半導体工場の新設が相次ぎ、大規模な電力需要を個別に予測する必要が高まっています。2025年以降の需要見通しでは工事着工状況や送電契約の締結情報をもとに個別需要を計上しています。
再エネ設備や大規模施設の系統接続申込が急増した場合、送配電事業者や広域機関への申込情報をもとに実現可能性の高い案件を抽出し、予測モデルに反映します。
北海道では冬季暖房需要と積雪による再エネ出力制限が重なり、特定時期にピーク電力が不安定になる傾向があります。気象条件と制度対応を組み合わせた補正を行い、地域ごとのリスクを評価しています。
補助金制度や工事期間の違いなど地域特有の制度対応も予測前提として重要です。
制度や政策動向は電力需要予測において欠かせない要素です。過去のデータだけでなく、今後施行される制度がどのような行動変化を引き起こすかを見極めることで、予測の精度は大きく向上します。
予測精度を高めるためには、制度の施行時期と対象範囲を正確に把握し、変数設定や地域差の補正といった具体的な方法でモデルに反映させることが重要です。また、GX政策や容量市場など変化の速い制度に対応するため、予測モデルは定期的に見直す必要があります。
電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

電力売買を効果的に行える
電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。
インバランスコストを削減
短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

自動でピークカットを実施
工場向け電力需要予測システムZEBLAで、設備の電力消費データを監視・分析。電力使用の無駄や異常を検知し、自動でピークカットが行える。
生産計画に影響しない節電
電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

効率的な再エネの需給管理
全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。
電力不足のリスクを低減
気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。