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再生可能エネルギーの需給予測と技術

再生可能エネルギー、特に太陽光発電や風力発電は、天候によって出力が大きく変動するという特性を持ちます。電力システムは需要と供給を常に一致させる「同時同量」が原則であるため、この変動性をいかに制御し、電力の安定供給を維持するかが重要な課題です。

本記事では、電力の需給予測技術と、実際の電力システムにおける活用方法について解説します。

電力需給予測の全体像と重要性

電力の需給予測とは、電力の需要と、太陽光・風力といった変動性再生可能エネルギーの発電量を同時に予測し、それに基づいて電力システム全体の運用計画を策定するプロセスです。

具体的には、火力発電の出力計画、蓄電池の充放電計画、他の電力エリアとの連系線活用、電力市場での取引量などを統合的に設計します。

予測の精度は、電力システムの安定性と経済性に直接影響します。予測が実績と大きく異なると、「インバランス」と呼ばれる需給の差が生じ、その調整のために追加コストが発生してしまうのです。

精度の高い予測は、インバランスの発生を抑制し、電力システムの運用コストを低減するために欠かせません。

発電量予測を支える技術

再生可能エネルギーの発電量予測は、様々なデータと技術を用いて行われます。予測の時間軸は、翌日の発電計画に使われる長期的なものから、数分先の需給調整に用いられる短期的なものまで多岐にわたります。

数値予報モデル(NWP)

予測の基盤となるのは、気象庁が提供する数値予報モデル(NWP)です。日射量や風向・風速といった気象データを取得します。気象衛星「ひまわり」の観測データや、地上に設置された観測機器のデータを組み合わせることで、予測精度を高めます。

物理法則+AI技術

予測モデルには、物理法則に基づく手法、過去のデータからパターンを学習する機械学習(AI)の手法、両者を組み合わせたハイブリッドモデルなどがあります。

予測には誤差が伴うため、単一の予測値だけでなく、予測の不確実性を幅で示す「確率予測」という考え方が重要視されています。起こりうる変動に備えて、事前にどれくらいの調整力(予備の電力)を確保すべきかを合理的に判断可能です。

予測精度を高めるための実務的なアプローチ

再エネの発電量予測には、どうしても誤差が伴います。計画と実績の差を吸収し、需給バランスを維持するために、電力市場には仕組みが用意されています。

インバランス料金

電力の供給計画と実績に差が生じた場合、その差分(インバランス)に対してペナルティ的な精算金が課されます。予測精度が低いとインバランスの発生量が増え、事業者のコスト負担が大きくなるため、予測精度向上が経済的に重要です。

調整力の活用

予測誤差を埋めるため、送配電事業者はあらかじめ「調整力」と呼ばれる供給力を確保しています。急な出力変動に対応するための待機電力で、日本では「三次調整力」などが該当。

調整力の必要量は、再エネの予測誤差の大きさに応じて決まるため、予測が正確になるほど確保すべき調整力量を低減可能です。

リアルタイム更新と市場取引への反映

翌日の計画を作成した後も、気象衛星やレーダーの最新情報を活用して、数分~数時間先の予測を逐次更新します。再予測の結果を、取引終了時刻が実需給に近い「時間前市場」での電力売買や、蓄電池の充放電制御にリアルタイムで反映させることで、直前の予測誤差を修正し、インバランスの発生を抑制します。

予測技術と電力システムの連携事例

AI技術を用いた確率予測

風力では、物理モデル(風況・乱流・地形補正)に統計・機械学習を重ねるハイブリッド化が進み、既設サイトで年間MAEが約10%改善した国内事例が公表されています。

日本気象協会は、面的補正などのAI技術を導入したモデルで、既設ウィンドファームの検証において定格比MAEが平均で約10%改善したと報告しています。改善幅はサイトや季節に依存するものの、エリア短期需給では、この相対改善が時間前市場での差分調達量や予備力の必要量低減に直結し、価値ベースの効果を伴って評価されます。

今後の展望

今後、数値予報モデルのさらなる高度化や、洋上風力発電の拡大に伴う観測網の充実により、再生可能エネルギーの予測精度は一層向上することが期待されます。確率予測のような先進的な手法の活用が一般化し、蓄電池やデマンドリスポンスといった他の調整力と組み合わせることで、より柔軟で経済的な電力システムの運用が可能になるでしょう。

予測技術の進化は、再生可能エネルギーの導入拡大と電力の安定供給を両立させるための基盤技術として、今後ますますその重要性を増していくと考えられます。

電力管理を効率化する
業種別電力需要予測システム3選

電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

小売電気事業者向け
一日前市場当日の予測で
インバランスコストを削減
富士通鹿児島
インフォネット
富士通鹿児島インフォネット公式HP
引用元:富士通鹿児島インフォネット公式HP
(https://www.fujitsu.com/jp/group/kfn/services/list/demandforecast/)
小売電気事業者向けの
導入メリット

電力売買を効果的に行える

電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。

インバランスコストを削減

短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

工場向け
製造現場の生産計画と
連動し電力コストを削減
富士電機
富士電機公式HP
引用元:富士電機公式HP
(https://www.fujielectric.co.jp/about/example/detail/solution_power_prediction_system.html)
工場に
向いているポイント

自動でピークカットを実施

工場向け電力需要予測システムZEBLAで、設備の電力消費データを監視・分析。電力使用の無駄や異常を検知し、自動でピークカットが行える。

生産計画に影響しない節電

電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

スマートハウス・
スマートビル向け
蓄電の活用と電力管理
気象データで支援
ウェザーニューズ
ウェザーニューズ公式HP
     
引用元:ウェザーニューズ公式HP
(https://wxtech.weathernews.com/industries/energy/)
スマートハウス・ビルに
向いているポイント

効率的な再エネの需給管理

全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。

電力不足のリスクを低減

気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。