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電力は大量に貯蔵することが難しく、常に需要と供給を一致させる必要があります。この「同時同量の原則」を守るため、小売電気事業者は日々の需給管理を行うことが必要です。ここでは、新規の小売電気事業者である新電力について詳しく解説します。
さらに、新電力の需給管理に関連する最新の動向についても調査してまとめていますので、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
電力の需給管理とは、単に需要を予測するだけでなく、調達計画の作成から広域機関への提出、そして実需給断面での調整までを含む一連の業務プロセスを指します。ここでは、新電力の担当者が理解しておくべき「計画値同時同量制度」と具体的な業務の流れについて解説します。
現在、日本の電力システムでは「計画値同時同量」という制度が運用されています。これは、小売電気事業者(新電力含む)と発電事業者が、それぞれ「需要計画」と「発電計画」を作成し、30分単位(1コマ)ごとの計画値と実際の需給実績を一致させることを義務付けるものです。
電気が余りすぎても足りなくても周波数が乱れ、停電のリスクが生じるため、事業者は常に精度の高い計画を作成し続ける必要があります。
実際の需給管理業務は、電力供給の数ヶ月前から始まり、供給直前まで続きます。主な業務フローは以下の通りです。
過去の電力使用実績や気象予報をもとに、将来の需要量(販売量)を予測します。この予測に基づき、自社電源で賄う分、市場(JEPX)から調達する分、相対契約で調達する分などの供給計画を組み立てます。
作成した需要調達計画と発電販売計画は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ提出する必要があります。提出のタイミングは、週間計画、翌日計画(前日正午まで)、そして実需給の1時間前までの修正計画など、厳密に定められています。
供給当日、気温の急激な変化や突発的なトラブルにより、前日の計画と実際の需要にズレが生じることがあります。その場合、実需給の1時間前までであれば計画の変更が可能です。不足分や余剰分を「時間前市場」で売買し、計画と実績の乖離(インバランス)を最小限に抑える調整を行います。
計画値と実績値にズレが生じた場合(インバランス発生時)、その差分を一般送配電事業者が調整します。この際、小売電気事業者は調整にかかった費用として「インバランス料金」を支払う、または受け取ることになります。
インバランス料金は市場価格に連動して高騰する場合があるため、予測を外し続けることは、新電力にとって経営を揺るがす大きな財務リスクとなります。そのため、以下に解説するような「精度の高い予測」と「効率的な管理体制」が不可欠となるのです。
新電力とは、電力自由化後に参入した電力小売事業者です。新電力は、大手が持つ豊富な電源や顧客基盤に対して、限られたリソースでの効率的な運営が求められます。また、大手と比べて規模の経済性に劣る新電力は、精度の高い需給管理や柔軟な料金設定など、小規模の強みを活かした戦略が必要です。
新電力における需給管理の大きな課題は、予測の不確実性によるリスクです。例えば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを電源とする場合、天候による発電量の変動が大きく、安定した供給計画を立てることが困難です。
また、需要側でも気象条件や社会的イベントによる突発的な変動が発生することもあります。このように、計画と実績の乖離が生じると、インバランス料金という形でペナルティが課せられ、経営を圧迫する要因となります。
需給管理の精度を向上させるには、テクノロジーの活用が効果的です。AIや機械学習を応用した需要予測システムは、過去の消費パターン、気象データ、イベント情報などのさまざまな要素を考慮し、高精度な予測を可能にします。
また、リアルタイムモニタリングのデータを即時に需給調整に反映させることで、インバランスのリスクを低減しながら市場価格が低いタイミングでの効率的な電力調達も可能です。
分散型エネルギー資源(DER)とは、電気利用者が分散して所有するエネルギーリソースです。この分散型エネルギー資源の統合管理は、需給バランスの安定化に有効な手段となります。
また、ネットワークを活用した電力網であるスマートグリッドと組み合わせることで全体の安定性が向上し、効率的な電力運用ができます。さらに、蓄電システムによるエネルギーマネジメントも有効です。蓄電システムでは、余剰電力の貯蔵や需要ピーク時の放電により変動を吸収する役割を果たすため、柔軟な需給調整が可能になります。
新電力が効果的な需給管理を実現するためには、外部との連携も重要です。気象情報提供会社やAI開発企業などのテクノロジープロバイダーとの協力関係を構築することで、予測精度の向上やシステム開発コストの削減が期待できます。
また、技術面ではIoTなどの先端技術を取り入れることで、市場環境の変化にも柔軟に対応できる体制を整えられ、市場対応力を向上させられるでしょう。
需給管理を成功させるには、日々の運用における柔軟な対応力とリスク管理体制の整備が重要です。まず、計画と実績の差異が生じた場合に迅速に計画を変更できる体制づくりが求められます。電力需要は季節や天候、時間帯によって大きく変動するため、常に監視と調整が必要となります。
また、インバランスを発生させないよう、精度の高い需給予測システムを導入し、継続的に改善していくことも大切です。突発的な需給ギャップが生じた場合の対応策をあらかじめ準備しておくことで、安定した事業運営につなげられるでしょう。
新電力では、大手電力とは異なる独自の技術を活かした需給管理を行っています。例えば、自社の顧客が持つ家庭用蓄電池をAIで一括制御を行ったという事例もあります。2026年3月、東京電力パワーグリッド株式会社が首都圏で初めて実施した再生可能エネルギーの出力制御に連動して、東京パワーサプライでは遠隔制御化にある家庭用蓄電池で「上げDR(需要創出型の充電制御)」を実施しました。
また2026年度より本格化する制度改正により、小売電気事業者には「将来の需要に見合う電気をあらかじめ一定量確保しておく義務」が厳しく求められています。この点から、インバランスや需給逼迫時のリスクを抑えるため、AIなどを使用した運用の高度化が進められています。
大手との競争や規模の制約といった課題のある新電力において、需給管理システムは重要な役割を担っています。AIやビッグデータを活用した高精度な予測システムを活用することで、安定的かつ効率的な電力供給を実現し、安定した事業運営につなげられるでしょう。
このサイトでは、効率的な電力管理を実現する電力需要予測システムを紹介しています。
業種ごとに適したシステムを掲載しているので、属人的な予測から脱却し、精度の高い電力需要予測を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。
電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

電力売買を効果的に行える
電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。
インバランスコストを削減
短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

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電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

効率的な再エネの需給管理
全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。
電力不足のリスクを低減
気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。