JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場は、翌日に受け渡しする電気を30分単位で取引する市場であり、需要や価格の透明性が高く、調達量の調整に活用しやすい点が特徴です。また時間前市場は、直前までの発電トラブルや需要のブレ(インバランス)を調整する役割を持っています。
ただし、スポット市場への依存度が高すぎる場合、燃料費の高騰などによる価格変動の影響を受けやすくなるため、他の調達手段との組み合わせを行うことが一般的となっています。
相対契約とは、発電事業者と小売事業者(または需要家)が、あらかじめ価格や数量、期間を取り決めた上で取引を行う手法です。こちらの方法では市場価格の影響を受けにくく、長期的に安定したコストで電力を調達できる点がメリットです。リスクを分散する観点から、ベース需要は相対契約で固め、変動した分については市場で調整する設計が有効と考えられます。
先渡(フォワード)や先物取引(フューチャーズ)は、将来の特定時期における電力価格を現時点で固定し、価格変動リスクを抑える手段です。特に電力先物の場合、現物の受け渡しを伴わない差金決済が主流となっており、現物市場での調達を行いながら、価格急騰時の保険として機能する点が特徴です。電力が高騰した場合には、先物で利益を得ることによって現物の調達コストが増えた分を相殺できます。
季節・時間を問わずに一定量の電力を供給できる電源(大型水力や石炭など)を切り出し、新電力などが安定的に調達できるように設けられた市場がベースロード市場と呼ばれています。また、非化石勝取引市場は、「CO2を排出しない環境価値」を証書として電力本体と切り離した形で取引を行う場です。コストだけではなく、電源の属性も含め調達したいと考えている場合に向いている方法です。
PPAや自家発電、蓄電池を組み合わせる方法も考えられます。この方法は買電量を減らせるため、外部市場への依存度を下げられます。オンサイトPPAの場合には初期投資を抑えながら再エネを導入できますし、蓄電池と組み合わせることによって余剰電力の有効活用やピーク時に放電を行うタイムシフトが可能となります。このような面から、コストの削減が期待できる点に加えて、災害時のBCP対策としても有効な方法といえます。
電力の仕入れコストは、発電に必要となる燃料価格のほか、為替や需給バランスによって大きく変動します。日本では燃料への輸入依存度が高いため、原油やLNG、石炭の価格上昇や円安が電力コストに直結することになります。さらに、猛暑などさまざまな原因により需要が供給を上回ると市場価格が上がり、逆に供給に余力があると価格が下がります。市場連動型の調達の場合には、このような変動をどのように吸収するかが課題となってきます。
天候や季節は、電力需要と再生可能エネルギーの出力に影響を及ぼします。夏の猛暑や冬の寒さは、冷暖房への需要を押し上げますので、需要がひっ迫して価格が上がりやすくなります。また太陽光や風力は気象に大きく左右され、曇天や無風の状態だと出力が低下しますが、逆に日射量が多い春や秋には供給過多になり価格の下落や出力制御が発生します。このような変動は市場価格やインバランスにも関わってくるため、予測精度と調整力を確保することが欠かせません。
制度由来のコストとしては、例えばインバランス料金や容量拠出金があります。インバランス料金は、計画値と実績値のずれに対する精算であり、需給がひっ迫している時は高くなる傾向があります。また容量拠出金は、供給力を確保するために小売電気事業者に課されているものです。これらは市場価格とは別に発生しますので、制度由来のコストまで含めた形で考えるのも大切なポイントといえます。
「どの調達手段をどの比率で組み合わせるか」という調達構成も、電気料金に大きく影響を与えます。固定価格契約が多い場合には価格は安定しますが、市場価格が下落した際の恩恵は受けにくくなります。逆に、市場連動比率が高い場合には、安価で電気を調達できる場面があるものの、急騰時には経営を圧迫する可能性があります。
以上から、相対契約やPPA、先物、蓄電池などを組み合わせていくことで、コストや安定性、脱炭素のバランス調整をこないやすくなります。
まずは現状把握が必要となります。月間の使用量のみ把握するのではなく、30分単位の使用実績や曜日、季節による変動、契約電力、更新時期、燃料費調整や市場連動条項の有無といった部分まで確認を行います。自社の需要パターンを把握することによって、自社に合った電力仕入れ戦略策定に繋げられます。
続いて固定価格と市場連動の比率を検討し、決定します。固定価格は予算の予見性を高められますが、市場価格が下がった際にその恩恵を受けられません。また市場連動は価格低下時の恩恵は受けやすいものの、急騰リスクがあります。そのため、単にコストを比較するだけではなく、自社のリスク許容度や需要の安定性などを踏まえて、固定価格と市場連動のバランスを設計していきます。
電力調達について検討するときには、短期調達と中長期調達を分けて考えるのもポイントです。JEPXのスポット市場など短期調達は、需要変動や突発的な不足を埋める役割を持っており、数年単位の相対契約などをはじめとする中長期調達は価格の高騰リスクを抑えます。それぞれを分けて考えることによって、市況の変化に強い調達基盤を作れます。
さらに、価格高騰や需要逼迫が発生した際のシナリオを準備することも大切です。市場価格が急騰した際に、どの契約を優先的に見直しするのか、デマンドレスポンス(DR)や蓄電池の活用によりどこまで買電を抑制可能かといったアクションプランを明らかにしておくことによって、非常時でも慌てず、迅速な意思決定が可能となります。
JEPXへの依存度を高めた場合、市場価格が安くなった場合に調達コストを大幅に抑えられる点がメリットであり、短期の需給変動にも柔軟な対応が可能です。ただし、価格が急騰した場合には仕入れコストが跳ね上がるといったように、価格変動リスクの直撃を受け、収益が不安定になる可能性がある点がデメリットとして挙げられます。
上記のように、JEPX比率を高めるほど「価格コストを抑えられる可能性」と「高騰時のリスク」の双方が大きくなる点を踏まえて設計を行っていくことが大切です。
相対契約は、発電事業者とあらかじめ価格や数量を固定することから、市場の急変を受けにくい点が大きなメリットといえます。ベース需要の部分を相対契約で固定すると、全てを市場調達に頼るケースよりも予算が立てやすくなります。ただし、固定比率を高くし過ぎた場合、市場価格が下がったとしてもその恩恵を受けにくくなるため、固定分と市場調達分のバランスについて検討するのもポイントといえます。
先物・先渡契約は、将来の電力価格をあらかじめ固定することによって、価格高騰時のリスクを抑えられます。先渡取引では現物の受け渡しを伴いますが、電力先物は差金決済による財務的なヘッジ機能を持っている点が特徴といえます。全てを固定するのではなく、相対契約と市場調達と組み合わせると、実務上の安定性を高められます。
再エネ調達や非化石証書は、脱炭素対応に有効な方法であるといえます。しかし、電力本体と環境価値は分けて考えることが大切です。非化石証書の購入は、既存契約を維持したまま環境価値を付与できますが、証書の種類や調達方法により、実質再エネとしての扱いや追加性に関する評価が異なります。
さらに、再エネ比率を上げ過ぎた場合、供給の変動を吸収することが難しくなるため、蓄電池や相対契約を組み合わせながら安定供給を確保することが大切です。
市場価格が安い時期だけを前提として契約した場合には、価格が上昇した際には想定外のコスト増を招くことになります。市場連動型やスポット比率が高い契約では、市場価格が安い時は有利ではあるものの、需要逼迫や燃料の高騰が発生した場合の価格変動リスクを抱えているといえます。そのため、調達戦略を検討する際には、「今の安さ」に飛びつくのではなく、価格が高騰した場合も含めた平均コストとリスクのバランスについて見極めることが重要です。
表面的な調達単価のみで比較した場合、インバランス料金や容量拠出金など見えにくい制度コストを見落とす可能性があります。見かけの単価が安かったとしても、制度由来の負担が多ければ総コストは高くなります。
加えて、価格変動リスクや将来的な供給力不足が発生する可能性まで含めた評価を行わなければ、実際のコストは想定よりも膨らむため、単価ではなく総保有コストで判断することが欠かせません。
需要予測が荒い場合、調達過多による無駄な支払い増加や、逆に不足した際の追加調達などによる損失が発生する可能性が考えられます。特に工場やビルでは、気象条件や曜日、生産計画などによって電気使用量が大きく変わるため、過去の実績の平均値のみではなく、需要予測と実績を継続的に突き合わせた上で調達量を見直す仕組みづくりを行うことが大切です。
脱炭素対応とコスト最適化を別に考えてしまった場合、コストの最適化と環境への対応がぶつかりやすくなります。そのため、脱炭素を単に「追加コスト」として切り離さず、自家消費型PPAや蓄電池、DRなどを組み合わせることによって、CO2削減とコストの抑制を同時に進められる可能性があります。
電気料金が急に上がった場合には、すぐに要因の分析と見直しが必要であるといえます。もし使用量が変わらないのに請求額が大きくなった場合には、燃料調整額や市場価格調整額、容量拠出金などが原因となっている可能性が考えられます。単に「値上げ」と捉えるのではなく、コスト増につながった内訳を詳細に分析し、固定価格比率の見直しや他の契約との比較によって、損失拡大を防ぐことにつながります。
契約の更新や入札、電力会社の切り替えを検討しているタイミングは、電力の仕入れ戦略を見直す良いタイミングです。更新を行う前に、現状の単価や契約条件、違約金など様々な面から比較することで、より有利な条件の選択ができます。
また切り替えだけではなく、自社の需要カーブを再度分析し、固定価格と市場運動の比率なども含めて検討することによって、戦略的なエネルギー調達の基盤を作れます。
再エネやPPAを検討する上では、電源調達全体について根本から再設計する節目といえます。特にPPAは長期契約となるため、既存の電力契約との関係を整理しないと、余剰電力の発生やインバランスリスクなど、二重のコストが発生する可能性も考えられる点には注意が必要です。
中長期でコストの削減やBCP対策を進めたいときも、仕入れ戦略の見直しを行っていきます。平時の電気代だけではなく、停電時の非常用電源や蓄電池、需要抑制などまで考えた場合には、望ましい電源構成が変わってきます。災害時や需要が逼迫しているときにも業務を止めないためには、価格のみではなく供給の継続性の確認が重要になってきます。
電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

電力売買を効果的に行える
電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。
インバランスコストを削減
短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

自動でピークカットを実施
工場向け電力需要予測システムZEBLAで、設備の電力消費データを監視・分析。電力使用の無駄や異常を検知し、自動でピークカットが行える。
生産計画に影響しない節電
電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

効率的な再エネの需給管理
全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。
電力不足のリスクを低減
気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。