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気象データと電力需要の相関とは?分析方法と予測活用を解説

電力需要を予測する場合には、気象データが用いられています。そこでこちらの記事では、気象データと電力需要の相関について解説しています。分析方法や予測の活用、注意点などをまとめました。

気象データと電力需要はなぜ相関するのか

電力需要を動かす主因は「気象要因」と「社会要因」

電力需要は、人々の活動に密接な関わりがあります。需要が動く要因のひとつは気象要因であり、外気温の変化に伴ってエアコンやヒーターなどの冷暖房機を使用し、快適な室内を維持するためにエネルギー消費が行われます。もうひとつの要因として挙げられるのが、社会的要因であり、例えば人口の増加やAI(人工知能)の活用拡大による需要の増大などが挙げられます。

電力需要には、この気象要因と社会要因が複雑に絡み合っています。

特に影響が大きい気象データは気温・湿度・天気

上記の通り気象要因は電力需要に大きな影響を与えていますが、気象データの中でも特に電力需要に影響するのが「気温・湿度・天気」です。当然気温が高かったり低かったりすると冷暖房を使用する場面が多くなりますが、同じ気温だったとしても湿度が高いと体感温度が上がりますので、冷房需要が増加します。

また、「天気(日射量)」もポイントのひとつです。青天時には日射により室温が上がるために冷房負荷が増えます。

夏と冬で需要の増え方が異なる理由

季節によっても電力需要は異なり、例えば夏と冬を比較すると需要の増え方が異なります。

夏は冷房を使用することが電力需要に影響を与えますが、気温の上昇にともない午後の時間帯に需要が特に上昇します。それに対して冬は暖房と照明の使用が需要に影響します。早朝に冷え込むことと、夕方の日没に伴う気温の低下と照明需要の増加により、1日に2回の電力需要のピークが現れる傾向があります。

さらに、外気温と室内の設定温度の差は冬の方が大きくなりやすいといえます。

気象データと電力需要の相関を見るときのポイント

年間で見るだけでは関係を見誤ることがある

気象データと電力需要には大きな関わりがありますが、単に年間のみで見ると、その関係を見誤るケースがあるため注意が必要です。電力需要は気温が高い夏と気温が低い冬に需要が高くなりますが、春や秋の過ごしやすい時期には気温が変化しても需要がほとんど動かなくなる点から、年間で見ると相関関係が低く出る、無相関に見えるなどのケースもあります。そのため、年間をひとくくりにして見た場合、特定の季節に発生する急激な需要変化などを見落とす可能性も考えられます。

季節・曜日・時間帯で分けると相関が見えやすくなる

正しい相関を把握するには、データを「季節」「曜日」「時間帯」といった形で分けて分析することが欠かせません。まずは夏と冬のように季節で分けることによって、冷房や暖房など季節ごとの特性を把握できます。また、曜日(平日・休日)で分けると、工場やオフィスなどの稼働に伴うベースの需要の違いがわかります。

さらに時間帯(朝や日中など)で細かく分けると、気象の変化が需要にどのような影響を与えるのかを確認できるようになります。

単純な一次相関ではなく非線形の関係もある

電力需要と気温の関係は、単純な一次相関ではなく非線形の関係もある点に注意が必要です。具体的には、快適な気温帯の時には需要が低下し、それよりも気温が高温・低温になると需要が増加するといったように、「V字型」「U字型」の曲線を描きますが、これを「非線形な関係」と言います。特に猛暑日などには、一定の気温を超えたタイミングでエアコンの稼働率を跳ね上がり需要が急増するケースもあるため、単純な比例式で考えた場合には、予測に大きな誤差が発生する可能性があります。

電力需要の分析に使われる主な気象データ

気温(最高・最低・平均)

電力需要の分析において、気温データは重要な意味を持ちます。それぞれの目的に応じて「最高気温」「最低気温」「平均気温」を使用します。例えば夏の冷房による最大需要や熱帯夜による夜間の需要について予測を行いたい、というケースでは最高気温がキーとなりますし、冬の早朝の冷え込みによる暖房の立ち上がり需要を把握するには最低気温がポイントとなります。また「平均気温」は、1日の総需要量のベースラインを推定する際に適しているといえます。これらのデータを複合的に使用しながら分析を行っていくことになります。

湿度・降水量・日照時間・天候

気温以外の「湿度」「降水量」「日照時間」「天候」も電力需要を左右します。例えば湿度は体感温度を変化させ、さらに不快指数を高めるために冷房の稼働を促します。また「降水量」や「天候」は、雨天の場合には家の中にとどまる機会が多くなりますし、日差しが減ることによる照明需要の増加に影響を与えます。特に日照時間は重要であり、晴天時の日射量が建物の温度を上げるため需要に大きく関連してきます。

気象実績データと気象予報データの違い

電力需要の分析を行う際に用いるデータには、「気象実績データ」と「気象予報データ」の2種類があります。

「実績データ」は、過去に実際に観測された値であり、需要と気象にどのような関係性があるのかを導き出し、予測モデルのアルゴリズムを構築・学習させるために使用されます。

また将来的な需要を計算する場合には、「予報データ」を用います。ただし予測には必ず誤差を含みますので、予報が外れた際のリスクまで考慮することが必要であるといえます。

相関分析を電力需要予測に活かす方法

相関分析は予測モデルづくりの出発点になる

需要予測のシステムやモデルの構築を行う場合には、相関分析が重要になります。「需要データに影響を与えている気象データは?」「どの時間帯で強い相関が見られるのか」という点を可視化し、モデルに組み込む変数を選定するための出発点となります。

回帰分析・重回帰分析で複数要因を扱う

相関関係を数式化して予測に結びつける手法に「回帰分析」があります。気温というひとつの要素のみで需要を説明しようとする「単回帰分析」に対し、実務では気温や湿度、降水量、曜日など複数の要因も同時に扱う「重回帰分析」が用いられています。この方法によりそれぞれの要素が電力需要にどの程度影響するのかを評価でき、実運用にも適した予測にも繋げられます。

機械学習を使うときに押さえたい考え方

近年はAIや機械学習を用いた予測が行われており、「変数設計(特徴量エンジニアリング)」と「学習データ」の質が非常に重要なポイントとなってきます。この場合には単に気温を入れるだけではなく、「前日からの気温差」や「体感温度」など、需要が変動するきっかけとなる特徴について人間が設計を行い、学習させることになります。さらに、過去数年のデータに存在しない異常気象が発生した場合、AIはこれまでのパターンから逸脱した予測を苦手とするため、人間の判断で補正を行う仕組みも大切になってきます。

気象データを活用した電力需要予測のユースケース

小売電気事業者の調達計画・価格リスク対策

一般家庭や企業に対し、電気を販売する小売電気事業者は、顧客の電気使用量を予測して事前に電気を調達しておきます。以上から、気象データを活用し高い精度での需要予測(調達計画)を行うことは、電気の買いすぎや不測を防ぐために必要であるといえます。気象予測は事業者の収益を守り価格変動リスクに対応する大切なツールとして活用されています。

発電事業者の需給運用・燃料計画・保守計画

発電所を保有する事業者の場合、気象データに基づき需要予測を行い、発電機の稼働を細かく調整します。また、火力発電所においては数日〜数週間先の需要見通しをもとにして燃料の調達や在庫管理を行う「燃料管理」を行っていきます。また、需要が低くなる時期について気象データから見極めて、発電機の「保守・点検計画」を立案するなど、安定した電力の供給とコストを削減するために電力需要予測が用いられています。

中長期予測で需給見通しを高度化する方法

日々の運用はもちろん、数ヶ月〜数年先の中長期の需要見通しにも気象データが活用されています。例えば、エルニーニョ現象などの気候変動メカニズムを分析することによって、「今年の夏は猛暑になる確率が高い」といった予測を需要想定に組み込みます。

この点から事前に発電所の稼働準備を整える、他のエリアから電力融通の枠組みを確保するなどの取り組みが可能になります。

気象データと電力需要の相関分析で注意したい点

相関があってもそのまま因果関係とはいえない

例えば「気温が高い時に電力需要が増加する」といった相関が確認できたとしても、これは気温が直接電気を消費するのではなく、「人間が暑さを感じエアコンを稼働させる」という行動が介在しています。この点から数字の相関があっても、それが直接的な因果であるとは限りません

例としては、電気代の高騰から冷房を控える人が大幅に増加するなど、背景となる社会情勢が変化することによって、過去の相関関係のパターンが崩れる点には注意が必要です。

地域差・需要家特性・異常気象で結果は変わる

相関の出方はどのエリアでも同じではなく、例えば寒冷地では冬の暖房需要の感度が圧倒的に高いなど、地域差が見られます。また、一般住宅が多いエリアと大規模な工場が多いエリアでは生活スタイルや稼働状況に基づいた需要家特性が異なるため、同じ気象条件だったとしても結果が変わってきます。

さらにこれまでのデータには存在しない異常気象が発生したケースは、既存の相関モデルが通用しないことから予測が大きく外れる可能性が考えられます。

高精度化には気象以外の説明変数も必要

需要予測を行うにあたって気象データは非常に強力な武器といえますが、それだけでは完全な予測はできません。予測精度を高めるには、気象以外の説明変数を適切に組み込んでいくことが求められます。

具体的には、お盆・年末年始などのカレンダー要因や経済の景気動向などが考えられます。また、実務においてはひとつの指標だけではなく複数の要因を組み合わせながら判断することが大切です。

電力管理を効率化する
業種別電力需要予測システム3選

電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

小売電気事業者向け
一日前市場当日の予測で
インバランスコストを削減
富士通鹿児島
インフォネット
富士通鹿児島インフォネット公式HP
引用元:富士通鹿児島インフォネット公式HP
(https://global.fujitsu/ja-jp/subsidiaries/kfn/services/list/demandforecast)
小売電気事業者向けの
導入メリット

電力売買を効果的に行える

電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。

インバランスコストを削減

短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

工場向け
製造現場の生産計画と
連動し電力コストを削減
富士電機
富士電機公式HP
引用元:富士電機公式HP
(https://www.fujielectric.co.jp/about/example/detail/solution_power_prediction_system.html)
工場に
向いているポイント

自動でピークカットを実施

工場向け電力需要予測システムZEBLAで、設備の電力消費データを監視・分析。電力使用の無駄や異常を検知し、自動でピークカットが行える。

生産計画に影響しない節電

電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

スマートハウス・
スマートビル向け
蓄電の活用と電力管理
気象データで支援
ウェザーニューズ
ウェザーニューズ公式HP
     
引用元:ウェザーニューズ公式HP
(https://wxtech.weathernews.com/industries/energy/)
スマートハウス・ビルに
向いているポイント

効率的な再エネの需給管理

全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。

電力不足のリスクを低減

気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。