PPSにおける需給管理は、需要予測や市場での取引、計画提出、監視といったように多岐にわたる業務があり、属人化や高負荷が発生しやすい業務であるといえます。こちらの記事では、なぜ業務効率化が求められているのか、効率化に繋げる方法にはどのようなものが考えられるのかといった具体的な対策をまとめています。
大量に貯めておくことができない電気の「発電量(=供給量)」と「消費量(=需要量)」を等しく保つことを「電力の需給管理」と呼びます。これを「同時同量の原則」と呼びますが、電力は消費量に対して供給量が多すぎても少なすぎても電力の供給に支障をきたす可能性があります。そのため、「同時同量の原則」を保つことが必要であるといえます。
需給管理は365日休みなく行われていますが、その中では、「電力の需要量を予測する」、「予測に基づき調達計画を作り、電力を調達する」、「電力広域的運営推進機関(OCCTO)に計画を提出する」、「当日は24時間体制で電力の過不足について調整する」といった流れにより、需要・供給の細かいバランスをとっています。もし供給当日に必要があれば、緊急的に調達を行うなどして計画に差異が発生しないように調節を行っていきます。
このような調整を24時間356日行うことによって、社会の重要なインフラである電力が途切れないように対応しています。
需給管理の業務は属人化しやすく、担当者にとって負担が大きくなりやすいといわれています。その理由は、365日休みなく守らなければならない提出期限に加え、業務を行うにあたって専門知識が必要であるためです。毎日の計画提出は定められた時間までに完了させる必要があり、遅延やミスは許されないという状況であることに加えて、電力需要を読み解く予想業務、価格の変動を見極める入札戦略については、長く業務を担当してきたベテラン担当者の勘や経験に頼ってしまうという状況になることも少なくないでしょう。
そのため、専門人材が少ない場合には特定の担当者に業務が集中しやすくなることで属人化が発生してしまい、本人にとっては高い負荷を受けながら業務を行うことになります。
需要予測業務においては、過去の電力使用実績のほかに、気温や湿度、曜日、カレンダーなどのさまざまな要素をもとにして、30分単位で翌日の電力需要を算出します。電力需要は気象の変動によって変わるため、常に最新の天気予報を反映させることが必要になってきます。また、対象となるエリアが広がったりした場合には扱うデータ量も増えますので、高い業務負荷が生じることになります。
予測した需要に対して、どこの発電所(市場)からどの程度の電力を調達すれば良いのか、といった計画を立てて、調達を行います。この点については、予測を見直すたびに調達計画の見直し・調達を行うことになります。
特にJEPX(日本卸電力取引所)での取引は価格が細かく変動していきますので、動向を監視しながら価格を抑えて調達するための戦略を練る必要があります。このように市場価格の高騰リスクを回避することに対してプレッシャーを感じるとともに、複雑な価格計算や調整作業が担当者に高い負荷がかかっていると考えられます。
作成した発電計画・需要予測は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)のシステムを通じて提出を行います。この点については、厳格な期限などが定められていることから、日々行っている業務の中でも非常にプレッシャーがかかってくる業務といえます。
提出した計画に対して、実際の需要・発電量がどのように推移しているかをリアルタイムでモニタリングします。猛暑などの影響によって予想以上に需要が増えた場合などには、市場からの追加調達といったように即対応を行っていく必要があります。さらに、翌日には過不足の精算やレポートの作成を行って社内への報告を行います。
手動計算を行っている場合、AIや機械学習を活用した需要予測システムの導入が有効と考えられます。過去の需要パターンや気象データをAIが学習することによって、高い精度での予測の算出が期待できます。この対応により担当者の経験に頼った属人化を排除でき、さらに作業にかかる時間の短縮が可能。結果として、予測精度の向上と工数削減に繋げられます。
広域機関への計画提出や、JEPXとの取引データの連携を自動化するシステムを活用する、という方法も考えられます。システムの導入により、ファイルの作成からアップロードまでを自動化、またはワンクリックで作業を完了できるようになるため、手入力によるヒューマンエラーを防ぎ、担当者は提出期限間近のプレッシャーから解放されるというメリットがあります。また、システム間のデータ自動連携を行うことにより、煩雑なデータ加工作業からも解放されます。
当日の需給実績やインバランス状況について、ダッシュボードでリアルタイムに可視化できるツールを導入し、異常値が発生した場合にアラートを通知する機能を用いれば、担当者が画面に張り付いて監視する手間を省けます。さらに、日々の運用実績レポートや収支計算の帳票の自動生成を行える機能を活用すれば、Excelなどを使用した複雑な集計・経営層への報告書などの事務作業を省力化できます。
システムの導入のほか、需給管理の運用実務を専門業者に委託する方法も考えられます。需要予測や市場調達、計画提出、当日の監視までの一連の業務について、専門チームが代行します。このことにより自社で専門的な人材を採用・育成をするコスト・時間を省けるため、コア業務に自社のリソースを集中させられるメリットもあります。
複数の新電力がグループを形成し、代表の契約者がまとめて需給管理を行う「バランシンググループ」を活用するという方法です。この方法では、グループ内で需給・供給の過不足を融通し合えるため、単独で事業を行っていく場合と比較してインバランスリスクを小さくできます。また、需給管理のシステムへの投資や実務運用についてもバランシンググループの代表企業に委託できるため、自社内でシステム・人員の確保する必要がなくなることから運営の負荷を大幅に削減できます。
ただし、「地域の再生可能エネルギーを電源に組み込むことが難しいケースがある」、「電力の調達先が限定される」といった制約など、柔軟性に欠ける点がある場合も考えられる点に注意が必要です。
需給管理業務のシステム化・外部委託によって、担当者の負荷を軽減できます。具体的には「356日休めない状況」や「早朝や夜間、休日に対応しなければならない状態」から解放されます。また、熟練の経験者でないと予測や計画の提出ができないといった属人化の解消にもつながりますので、もし担当者が急に不在になった場合の業務停止リスクをなくし、安定した形で業務の継続ができるようになります。
精度の高い需要予測システムを導入する、バランシンググループを活用するといった対応を行うことにより、需要と供給のずれをできる限り抑えられるようになります。その結果、ペナルティとして発生する高額なインバランス料金の支払いリスクを大幅に削減できます。また、市場価格をリアルタイムに監視することや、最適な電源割り当ての自動化によって、調達コストを最適化することに繋げられます。
さまざまなシステムや外部委託、バランシンググループの活用により、自社でゼロからシステムの構築を行う、専門知識を持った人材の採用・育成を行う時間を削減し、迅速な事業の立ち上げに繋げられます。さらに、将来的に事業を拡大する場合にも、システムや外部委託先にて柔軟にスケールアップへの対応ができるため、積極的な営業拡大を行うことが可能となる点もメリットのひとつです。
もともと自社で一定の発電設備(自社電源)を多数保有しており、独自の運用ノウハウを持っている企業には、内製強化を行うことが向いているといえます。また、専門人材が社内に豊富に在籍しているといった場合も同様に、自社の強みを活かした柔軟なカスタマイズができるように、内製システムの開発や強化を行っていくことがおすすめといえます。
専任の担当者はある程度確保できているものの、Excelなどを使用した手作業を効率化したいなど、業務フローの標準化や省力化を進めたいと考えている場合には、システムの導入を行うことが向いていると考えられます。例えば計画の提出やデータ集計といったルーチンワークの部分をシステムで自動化することによって、人的なミスを削減しながら効率よく運用を行っていく、という体制の構築を目指せます。
電力事業への新規参入を検討している企業や、異業種からの参入を考えており、社内に需給管理のノウハウを持たない場合には、外部委託やバランシンググループの活用が向いています。また、専任担当者を配置する人件費を抑えたい、システム導入の初期投資を抑えたいと考えている事業者にも向いている方法であるといえます。外部委託を利用する、バランシンググループへ参加することによってインバランスが生じるリスクを抑えられます。
手段を選択する場合には、まずは自社の事業フェーズが「立ち上げ機なのか」「拡大期なのか」といった点や、確保可能な予算や人材を明らかにし、状況に合った効率化手段を取り入れることが大切です。また、システム導入にあたっては、頻繁に行われる法制度やルールの変更に自動アップデートで対応が可能かを確認することが重要です。
外部委託やバランシンググループを活用する、というケースについては、代行費用と削減可能な人件費やインバンランス料金を比較し、費用対効果をシミュレーションした上で導入するかどうかを決定します。
電力需要予測システムは、さまざまな場面で活用されるものです。ここでは「小売電気事業者向け」「工場向け」「スマートハウス・スマートビル向け」と業種ごとにおすすめの電力需要予測システムを紹介しています。

電力売買を効果的に行える
電力業務特化型の電力需要予測システム。自動で再学習を行うAIモデルの高精度な予測により、電力売買の効果的なタイミングが図れる。
インバランスコストを削減
短時間での予測が可能なため、一日前入札当日の新鮮なデータを反映させた高精度の予測実施。より正確な予測でインバランスコストを効果的に削減可能。

自動でピークカットを実施
工場向け電力需要予測システムZEBLAで、設備の電力消費データを監視・分析。電力使用の無駄や異常を検知し、自動でピークカットが行える。
生産計画に影響しない節電
電力不足時は重要度の低い機器を間引き、さらに不足すれば発電機を稼働するため、生産計画に影響することなく電力平準化を図ることが可能。

効率的な再エネの需給管理
全国の気象観測網を活用した電力需要・発電量予測を提供。太陽光・風力発電の変動を精度高く把握可能なため、再生可能エネルギーの需給管理を調整できる。
電力不足のリスクを低減
気象による予測誤差を抑えることで、スマートハウス・ビルにおける電力不足のリスクを低減。また、自家消費・売電など余剰電力を適切なタイミングで活用可能になる。